マイホームを購入したり建てたりする上で、あまり気にされない部分が軒(のき)の有無。しかし、軒は家にとっての縁の下の力持ちのような存在です。
本記事では、そんな軒の役割やメリットとあわせて、軒をつけられない場合の対策を紹介していきます。軒の設置に悩んでいる・軒の重要さがよくわからないといった人は、本記事を参考にしてみて下さい。
目次
軒とは?
軒とは、家の外壁や窓よりも外側に出っ張っている屋根の部分のことをいいます。更に軒を詳しく解説すると、以下の通りです。
軒先(のきさき):軒の先端部分で、雨樋(あまとい)の部分は軒樋(のきどい)といわれる
軒天(のきてん):軒の裏側部分のことで、軒裏ともいわれる
軒下(のきした):軒の下の空間のことで、バルコニーや縁側などの空間
軒はどの家にもあるものではないの?と思っている人も多いでしょう。しかし近年では、建築基準法における建築面積が関係して、軒自体を設置している家が少なくなっています。
建築基準法では、軒が外壁もしくは柱の中心線から1mを超える場合、その先端から1m後退した部分までが建築面積に含まれます。そのため、大きな軒を設置すると、建物本体の建築面積が制限されてしまうことに。
これにより、狭い土地の多い都心部では、建物本体の建築面積を広く確保するために、1m以内の長さの小さな軒にしたり、そもそも軒自体がない建物が多いです。反対に、家を建てる土地自体の広さが確保しやすい地方では、軒による建築面積の制限を気にする必要がないため、大きな軒のある家が多いといえます。
庇との違い
庇(ひさし)と軒の違いは、屋根との繋がりの有無です。軒は屋根と繋がっている部分なのに対して、庇は玄関や窓といった開口部分の上に設けられ、独立している部分です。
軒のメリットや役割
建物にとって、軒はどのようなメリットや役割を担っているのでしょうか。軒のメリットや役割を見ていきましょう。
雨の吹き込みが防げる
軒が長い家だと、小雨程度であれば窓を開けていても、雨の吹き込みが防げるのがメリットです。また、軒が長ければ雨との距離も遠くなるため、近年増えているゲリラ豪雨の雨音も、軒のない家に比べると小さく聞こえる消音効果も期待できます。
外壁を保護してくれる
軒があることで、雨風や紫外線などの影響を受けにくく、外壁を保護してくれます。特に、家の外壁材にサイディングやガルバリウム鋼板といわれるものが使用されている外壁は、継ぎ目のコーキング剤が紫外線に弱い性質を持つため、軒を設置しておくのがおすすめです。
外壁劣化を防ぎたい・メンテナンスの回数を減らしたい人は、軒を設置するようにしましょう。
気候の影響を受けにくくする
日本には四季があるため、夏は暑く冬は寒いといった、気候の影響を受けにくくする役割もしています。特に地方などで雪が降る場合は、軒を長くすると夏場は室内に直射日光が入るのを防いで気温の上昇を抑え、冬場は冷気が直接あたりにくくなるのです。
また、四季による寒暖差の激しい地域では、屋外と室内の温度差が大きくなるため、窓ガラスが熱割れする可能性もあります。予期せぬトラブルを防ぐためにも、軒のある家が重宝するでしょう。
縁側が作れる
軒を設置すると、縁側が作れます。縁側とは、部屋と庭の間に設けられた板張り廊下のような通路です。築年数の古い木造の家や、お寺によく設置されています。縁側は、外の景色を楽しむ日本独自の場所としてうってつけです。
軒のデメリット
家にとって魅力的な軒ですが、デメリットも存在しています。軒の設置に迷っている人は、メリットだけでなく、デメリットの両方を知った上で判断して下さい。
建築コストが高くなる
軒を設置すると、軒の分だけ建設コストが高くなります。また、軒を造る手間もかかるため、工期(家の完成までの期間)が長くなることも珍しくありません。
建ぺい率に影響が出る
健ぺい率とは、建築基準法によって定められている敷地面積に対する建築面積の割合のことを示します。防災や町の景観、安全性・快適性を担保するためのもので、地域や用途地域によって割合は異なるのが特徴です。
そのため、軒の長さによっては、建築面積が建ぺい率による制限を受けることがあります。建ぺい率による制限ギリギリまで家を建てたい場合は、軒の長さによって居住空間が狭くなることがあるため、注意が必要です。
狭い土地にできるだけ大きな居住空間を建築したい都市では、このような建ぺい率による影響をなくすため、短い長さの軒にする傾向にあります。
外観の見た目に影響が出る
軒は、長ければ長いほど家の外観に凹凸が生まれます。モダンやスタイリッシュな外観が好みの場合、軒の設置によって外観の見た目に影響が出るので、機能性かデザイン性か、どちらかを選ぶ必要があるでしょう。
軒なし物件は避けた方がいい?
一概に、軒なし物件は避けた方がいいとは言えません。軒がある方がよいのか、ない方がよいのかは、住む人のニーズによって異なります。家に機能性を求めるのであれば、軒あり物件の方がおすすめです。
しかし、外観のデザイン性を求めるのであれば、軒なし物件でも何ら問題がないため、自分のニーズに合わせて、軒の有無を検討してみて下さい。
軒をつけられない場合の対策
軒をつけたいけれど、建売物件や中古物件、建ぺい率によって軒がつけられない場合は、どうすればよいのでしょうか。軒をつけられない場合の雨風や日差し対策を解説していきます。
庇を活用する
軒の代用として、庇を活用するのがよいでしょう。庇も軒と同様に、雨風や砂埃から外壁を守り、侵入を防ぐ役割があります。雨風や砂埃が入り込みやすい窓や玄関の上に庇を設置するのがおすすめです。ただし、庇にも建ぺい率は適用されるため、長さは1m以内に留めるのが無難です。
防水対策を行う
注文住宅の場合、外壁に防水対策を行なうのも、軒の代わりとして有効です。外壁の防水対策には、防水機能のある塗料・防水機能のあるタイル・外壁の仕上げ材の下に防水シートを張るなどが挙げられます。
外壁に防水対策を行なうことで、軒の役割を外壁自体に担ってもらうのです。家を長持ちさせるためにも、外壁の防水対策を行いましょう。
まとめ
自分で家を購入するまで知られないことが多いのが、軒の重要性です。軒の有無は、ニーズによって異なりますが、軒がある方が家が長持ちするといえます。そのため、家に対して外観重視の人も、軒の代わりになるような対策を施しておくと安心でしょう。
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