日本で建てられている住宅の大半が、二階建てと平屋です。これからマイホームを建築する・購入する場合の選択肢としても、二階建てと平屋が主な候補に挙がる人は多いでしょう。建物の構造上、二階建てと平屋では、住宅に求める機能性や居住する世帯構成によって、快適に過ごせるか不便に思うかが異なる傾向です。
今回は、二階建てと平屋のメリット・デメリットと、向いている世帯の特徴を解説します。これから一軒家を購入するにあたり、二階建てと平屋のどちらにするか迷っている人は参考にしてください。
1.二階建てと平屋どちらが多い?着工建築物の棟数を基に解説
日本における戸建て住宅の形状として一般的な二階建てと平屋では、どちらが多く建てられているのでしょうか。下記は、国土交通省が公表した、居住専用住宅・居住専用準住宅・居住産業併用建築物の総計となります。
平屋の棟数 | 48,141棟 |
---|---|
二階建ての棟数 | 327,500棟 |
日本で建てられた戸建て住宅のうち、二階建てが327,500棟と大半を占めており、平屋は48,141棟と全体の約14.7%しかありません。
日本で平屋が少ない理由には、下記3点が挙げられます。
- 建ぺい率に制限がある
- 広い土地が必要となる
- 建築費が割高になりやすい
住宅には建ぺい率が決まっており、平屋は二階建てよりも多くの土地が必要です。人口の多い大都市周辺では地価が高い上に広い土地の確保が困難なため、平屋は選ばれにくい傾向にあります。
2.二階建てを建てるメリット・デメリット
二階建て住宅は、その名の通り地上部分が二階層づくりとなっている住宅を指します。一階と二階がほぼ同じつくりをした総二階建てと、一階よりも二階の面積が小さな部分二階建てがあり、比較的都市部に多く見られる住居形態です。
ここでは、二階建てを建てるメリット・デメリットを解説します。
2-1.メリット
二階建ての主なメリットは、以下のとおりです。
プライバシーを確保しやすい
二階建て住宅の場合、外部の視線よりも高い位置に居室を設けられるため、プライバシーを確保しやすくなります。周囲の住宅と対面しないように窓の方角を調整すれば、通行人の目を気にして窓を小さくしたり塞いだりする必要がありません。
土地が狭くても延べ床面積を確保できる
二階建て住宅の場合、平屋と同じ土地面積でも2倍近い延べ床面積を確保できます。土地が狭くてもゆとりある生活スペースを確保できることが、二階建て住宅のメリットです。
二世帯で過ごしやすい
二階建て住宅の場合、一階と二階で住居スペースを分けることができます。また、台所・トイレなどの水回りを個別に設置し主要な生活・家事動線を分けると、互いのプライベートを尊重することも容易です。
都市部のように人通りが多い場所でもプライバシーを確保しやすく、狭い土地でも居住空間を広く持てる・二世帯で過ごしやすいことが二階建て住宅のメリットです。次に、二階建て住宅のデメリットを見てみましょう。
2-2.デメリット
二階建ての主なメリットは、以下のとおりです。
掃除などに手間がかかる
二階建て住宅では階段が必須な上、間取りも複雑なケースが多い傾向にあります。階段を1段ずつ掃除する・掃除機を移動させる・洗濯物を上げ下げするなど、掃除や洗濯に手間がかかることが少なくありません。
二階部分は地震で揺れを感じやすい
建物の高さに対して土台の面積が広いほど、耐震性が高くなります。土地の狭さを補うために建物の高さを出した場合、二階部分は地震などによる揺れの影響を受けやすい傾向です。
歳を取るにつれて階段の上り下りが大変になる
年齢を重ねて足腰が弱くなったり病気がちになったりすると、階段の上り下りが負担となります。家族構成や体調によっては、エレベーターの設置や住まいの建て替えが必要です。
二階建ては階段の上り下りが必須・掃除に手間がかかるなど、時間や体力との兼ね合いが必要となります。長く住む場合は、将来的な生活基準も考慮に入れた間取りづくりがポイントです。
3.平屋を建てるメリット・デメリット
平屋は、一階部分のみで構成された住宅を指します。二階建てと比べると天井が高めでワンフロアが広いケースが多く、地方や昔ながらの日本家屋によく見られる住居形態です。近年では間取りや外観にこだわったデザインの住宅も少なくありません。
ここでは、平屋を建てるメリット・デメリットを解説します。
3-1.メリット
平屋住宅の主なメリットは以下のとおりです。
動きやすい生活動線になる
階段のない平屋では、掃除や洗濯の際に階段の上り下りが必要ありません。平面のみの移動でよいため動きやすく、コンパクトで効率的な生活動線の間取りを設計しやすくなります。
メンテナンス費用を抑えることができる
長期にわたり住宅の耐候性や美観を保持するためには、定期的な点検や修繕が必須です。平屋はメンテナンスの項目が少ない上、屋根の修繕や外壁の塗装に大掛かりな足場を組む必要がありません。また、給排水管の破損や雨漏りなどの修繕も、該当箇所のみで済みます。
バリアフリー化しやすい
二階部分の荷重がない平屋は構造的に安定しており、壁や柱を最小限に抑えて部屋や廊下、玄関口などを広く取ることが可能です。もともと階段がなく平坦なつくりのため、後からでもバリアフリー化しやすい建築様式となります。
構造が安定しており階段の位置に縛られない平屋は、部屋の広さや配置の自由度が高い住宅です。メンテナンス費用を抑えることができ、生活実態に合わせて間取りを変更しやすいことも、平屋のメリットと言えるでしょう。
3-2.デメリット
平屋住宅の主なデメリットは以下のとおりです。
広い土地が必要になる
平屋で余裕のある居住スペースを確保する場合、必要な土地の面積も広くなります。二階建てと平屋で同じ延べ床面積の住宅を建てるためには、2倍以上の土地を用意しなければなりません。屋根や基礎工事の面積も大きくなることで、坪単価も高くなる傾向です。
周囲の建物によって日当たりなどの影響を受けやすい
住宅の周囲に高い・幅広な建物が多いと、採光や風通しが悪くなることがあります。また、建物の中心部も太陽光が入りづらいため、建物をコの字型にする・天窓を設けるなどの工夫が必要です。
水害を受けやすい
全ての部屋が同じ高さにある平屋では、水害に遭った際の安全地帯がありません。全ての部屋が浸水するため、甚大な被害を受けやすくなります。
平屋は日当たりや風通しなどで周囲からの影響を受けやすく、水害に弱いことがデメリットです。土地の広さ以外にも、海抜情報や周辺環境、ハザードマップは入念に確認しましょう。
4.二階建て・平屋が向いている世帯の特徴
住宅の建築・購入にかかる費用は、土地代以外にも使用する建築資材や家のデザインによって大きく異なります。また、税金面に関しても家の建て方次第で変化するため、「二階建てだから節税できる」「平屋だから税金が高くなる」とは言い切れません。
住宅を選ぶ際には、コスト面だけでなく実際に住む世帯の特徴と照らし合わせましょう。以下は、二階建てと平屋のそれぞれに向いている世帯の特徴です。
【二階建てが向いている世帯】
- 二世帯住宅や思春期の子どもがいるなど、プライバシーを確保したい世帯
- 土地代を節約したい世帯
- 道路と近く外からの目線が気になる世帯
【平屋が向いている世帯】
- 小さな子どもや高齢者がいるなど、バリアフリーを重視する世帯
- 部屋のスペースを広く取りたい世帯
- 家族間にコミュニケーションのある暮らしを重視したい世帯
長期にわたり同じ住宅に住み続ける場合は、家族構成や世帯の特徴が変化する可能性を考慮しなければなりません。住宅を選ぶ・建てる際は土地代や建築コスト、税金面に加え、現在から未来にかけてどのような世帯で暮らすかを予測した上で計画しましょう。
まとめ
日本で建てられる住宅の多くは二階建てです。平屋は広い土地が必要となる上、建築費が割高となりやすいこともあり、地価が高めな都市部では選ばれにくい傾向にあります。ただし、二階建て・平屋ともにメリット・デメリットがあるため、一概にどちらがよいとは言えません。
また、土地代・建築費・税金以外にも、将来的なメンテナンスやリフォームなど、さまざまな場面で費用がかかります。住宅を選ぶ際は、現在だけでなく将来的な世帯構成・変化を見越して考えることが大切です。