マイホームに駐車場を設置すれば、駐車料金が不要になるだけでなく、車から荷物を降ろして自宅まで運ぶ必要がなくなります。駐車場の形態によっては、車を雨風から守ったり、趣味のスペースとして活用したりもできるでしょう。一方で、駐車に必要なスペースを間違うと、車から出入りするスペースが確保できない・バックドアを開けられないといったことが起こる恐れがあります。
この記事では駐車場に必要なスペースのサイズの計算方法や、駐車場の設置時に注意すべきポイント、自宅に設置可能な駐車場の種類について解説します。
1.【車種別】駐車場に必要なスペースとは
利便性の高い駐車場を設置するためには、基本寸法や面積の計算方法を把握した上で、設計を工夫することが大切です。駐車スペースに最低限必要な面積は、愛車の車種によって異なります。以下は、国土交通省の示す車種別の駐車スペースの基本寸法です。
設計対象車両 | 長さ(m) | 幅員(m) |
---|---|---|
軽自動車 | 3.6 | 2.0 |
小型乗用車 | 5.0 | 2.3 |
普通乗用車 | 6.0 | 2.5 |
小型貨物車 | 7.7 | 3.0 |
なお、公共施設の駐車場では多くの場合、車室の幅員を2.5m程度にしています。公共施設に駐車する際に狭さを感じる場合は、よりゆとりを持った駐車スペースを確保しましょう。
また、必要な駐車スペースは、バックドアや左右ドアの開閉スペースによっても変わります。ドアの開閉に困らない長さと幅員を計算すれば、荷物の出し入れに困りません。
- 長さ:車の長さ+バックドアの開閉スペース
- 幅員:車幅+左右ドアの開閉スペース
車から乗り降りする際の歩行通路を確保するために、左右ドアの開閉スペースは、最低0.6m、ドアを大きく開きたい場合は0.9m以上確保しましょう。また、背後に跳ね上げるタイプのバックドアを採用している車では、開閉スペースとして車の背面側に1.6m程度の空間を用意することが望ましいです。
また、多くの乗用車の車高は1.5m程度ですが、ワンボックスカーや大型車、一部の軽自動車は車高が高いため、屋根付きの駐車場を設置する場合は注意しましょう。
以下の表は駐車スペースの基本寸法および駐車スペースの計算式をベースとした、駐車スペースの概算です。
【車種別の駐車スペースの概算】
車両の種類 | 車両の概算サイズ | 駐車スペースの長さ | 駐車スペースの幅員 |
---|---|---|---|
軽自動車 | 長さ約3.4m 横幅約1.48m |
約3.6~5.0m | 約2.08~2.38m |
小型乗用車 (コンパクトカーなど) |
長さ約4.2m 横幅約1.7m |
約5.0~5.8m | 約2.3~2.6m |
中型乗用車 | 長さ約4.7m 横幅約1.7m |
約6.0~6.3m | 約2.5~2.6m |
ミニバン・ワンボックスカー | 長さ約4.8m 横幅約1.7m |
約6.0~6.4m | 約2.5~2.6m |
大型乗用車 | 長さ約5.1m 横幅約1.9m |
約6.0~6.7m | 約2.5~2.8m |
1-1.複数台駐車する場合に必要な面積の決め方
複数の車両を駐車する場合は、互いの車のバックドアや左右ドアの開閉スペースを考慮して駐車スペースを決めましょう。
たとえば、長さ3.4m・幅員1.4mの軽自動車を2台並べて駐車する場合に必要な長さ・幅員は、以下の通りです。
- 長さ:3.4m+1.6m=5.0m
- 幅員:(1.4m×2台)+(0.6m×3)=4.6m
同様の軽自動車を3台並べて駐車する場合には、幅員が(1.4m×3台)+(0.6m×4)で、7.6mと計算できます。
1-2.縦列駐車に必要な面積の決め方
マイホームの間取りや敷地形状によっては縦列駐車でしか、駐車スペースを確保できないケースもあります。バックで縦列駐車するためには、車の長さの1.5倍程度の面積を確保することが必要です。たとえば、長さ3.4mの軽自動車で縦列駐車する場合は、長さ5.1mの駐車スペースを確保しましょう。
前から縦列駐車する場合には車の長さの3倍程度が必要とも言われており、よりゆとりを持った設計を考えなければなりません。また、いずれの方向から縦列駐車する場合でも、左右ドアやバックドアの開閉スペースは必要です。
縦列駐車するために必要なスペースは利用者の運転技術によっても変化します。家族の中に縦列駐車を苦手とする人がいる場合は、細かくハンドルを切り返しできるように、幅員に余裕を持たせた設計を考えましょう。
2.自宅に駐車場を設置するときに注意すべきポイント
駐車場は家づくりの中でも、設置後に不便さを感じたり設計ミスを後悔したりするリスクの高い場所です。自宅に駐車場を設置するとき、広さ以外に注意すべきいくつかのポイントを確認して、リスクヘッジを行いましょう。
2-1.前面道路の幅を考えて出入り口の幅を決める
前面道路幅が狭い敷地に家を建てる場合、駐車場の出入り口を広げてゆとりを持った設計を採用すると、利便性が高まります。駐車場の出入り口の幅も狭いと車が角を曲がりきれず、想定したスペースに収まらない可能性があるためです。
なお、不特定多数の人が出入りする駐車場には、出入り口で発生する事故を防止する目的で、以下の規制が適用されます。
五 自動車の出口付近の構造は、当該出口から、イ又はロに掲げる路外駐車場又はその部分の区分に応じ、当該イ又はロに定める距離後退した自動車の車路の中心線上一・四メートルの高さにおいて、道路の中心線に直角に向かつて左右にそれぞれ六十度以上の範囲内において、当該道路を通行する者の存在を確認できるようにすること。
引用:e-gov法令検索「駐車場法施行令(昭和三十二年政令第三百四十号) 第七条」/引用日2023/4/3
家族のみが使用する家の駐車場は上記の規制が適用されないものの、安全面へ配慮して、通行者を確認できる設計を採用すると安心でしょう。
2-2.傾斜のない駐車スペースを作る
横方向の傾斜が激しい駐車場を利用していると片側のみに過剰な負担がかかってしまい、部品の変形や故障を招くリスクがあります。愛車を長持ちさせるためには自宅の駐車場を、横方向に傾斜がなく、平らな形状に設計しましょう。
なお、駐車場を設計する際には水はけを良くする目的で、縦方向の傾斜をつけることもあります。縦方向の傾斜をつける場合には、2〜4%程度を1つの目安としてください。
ただし、縦方向の傾斜が激しい駐車場では坂を登る際にアクセルを強く踏み込まなくてはならず、輪止めを超えてしまうリスクがあります。縦方向の傾斜をつける場合は建築士とも相談し、安全面と利便性のバランスが取れる設計を検討しましょう。
2-3.将来の生活設計を考えてスペースを決める
駐車スペースの広さは家が完成した後、簡単に変更できません。将来の生活設計や家庭事情も踏まえた上で、駐車スペースは十分な広さを確保しましょう。
たとえば、子供が産まれた、両親との同居が必要になった、などの理由で家族の人数が増えた場合、より大きな車を買う必要があるでしょう。また、自分だけでなく家族が将来的に車を買う可能性も考えられます。将来起こりうることを予測して駐車スペースを用意しなければ、後々生活が不便になってしまうため、注意が必要です。
ほかにも、家族の怪我や両親の介護の際に車椅子での移動が必要になった場合を考慮してスペースを設計すれば、不測の事態が起きても安心できます。
3.自宅に設置できる駐車場の種類とは
自宅に設置できる駐車場には複数の種類があり、選択によって予算や機能性が変化するため、特徴を把握した上で決めることが大切です。以下では、自宅に設置できる代表的な駐車場の種類と特徴を紹介します。
露天駐車場(オープンタイプ) |
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露天駐車場は、柱や屋根を作らず、地面を舗装する簡易的な駐車場です。コストが安くつき、柱や屋根のスペースが不要なものの、屋根や壁がないため風雨によって車が劣化しやすくなる欠点があります。 |
カーポート |
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カーポートは、露天駐車場に柱や屋根を追加するタイプの駐車場です。ガレージと比較して低予算で設置でき、デザインの選択肢も多様です。一方で、壁がないため飛来物や横殴りの雨などで車が傷つきやすく、柱のスペースが必要になります。 |
ガレージ |
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ガレージは、壁と屋根によって車を覆うタイプの駐車場です。防犯性にすぐれ、天候から車を守ることができるほか、趣味用のスペースとしても活用できる利点があります。一方で、より広いスペースが必要になり、費用相場は高くなります。 |
駐車スペースは種類によってそれぞれ異なったメリットとデメリットがあります。自分や家族が生活で重視するポイントを軸として総合的な結論を出すと、望んだ駐車スペースを手に入れやすくなります。
また、自分や家族にとって最適な駐車場は土地の形状や家のデザインによっても変化するため、ハウスメーカーの担当者にも相談し、後悔しない結論を出しましょう。
ガレージに固定資産税はかかる?条件やガレージを作る際の注意点もまとめ
利便性の高い駐車場をマイホームに設置するためには、駐車スペースの基本寸法や面積の計算方法を把握することが望ましいです。左右ドアの開閉スペースとして0.6m、バックドアの開閉スペースとして1.6mを確保すれば、車への出入りや荷物の出し入れをスムーズに行えます。
駐車場を設置するときには、将来の生活設計に合わせて前面道路の幅に合わせて出入り口の幅を決め、傾斜の少ない駐車スペースを作ることに注意しましょう。また、露天駐車場・カーポート・ガレージの中から、家族での生活に合った駐車場の種類を選ぶのも大切です。