「平屋」とは1階建ての住宅で、昔ながらの日本家屋に多く見られる建設スタイルです。現代の日本では2階建て以上の住宅が一般的ですが、ゆったりと暮らせるイメージから平屋を検討している人も少なくありません。一方で、実際に平屋で生活した経験がある人は多くないため、平屋での生活を具体的にイメージするのが難しい人もいるでしょう。
当記事では、平屋のメリット・デメリット、平屋のデメリットを解消する方法を解説します。2階建ての住宅と比較しながら平屋での生活をイメージし、自分たちの生活に合う住宅を検討しましょう。
1.平屋のメリット4選
1階のみで構成される平屋には、「庭などに出やすく自宅の中でも屋外での時間を楽しめる」「階層が低くメンテナンス費用を抑えられる」など、多くのメリットがあります。ここでは平屋ならではのメリットを4つ紹介するため、平屋での生活を具体的にイメージしてみましょう。
1-1.家事動線・生活動線がスムーズになる
平屋は1階のみのため、階段で上下に移動する必要がありません。水回りを1階に集中させ、掃除や洗濯などの家事を1階のみで完結させると、日々の家事を効率よくこなせるようになります。
毎日のように掃除機や洗濯物を持ったまま階段を上り下りするのは、心身ともに負担がかかる上に危険です。家事を行う人が若い間はあまり気にならなかったとしても、年齢を重ねるにつれて階段の使用は負担も危険も大きくなります。1階のみで生活できれば、快適かつ安全に毎日を過ごせるでしょう。
1-2.家族の気配を感じながら生活ができる
平屋では家族全員がワンフロアで生活します。子どもが幼いうちは大人の目の届く場所で遊ばせられるため、トラブルにも対応しやすく、安心して自分の用事を済ませることが可能です。子どもも家の中で常に大人の気配を感じられ、安心して過ごせるでしょう。
また、子どもの成長に伴い、一般的に家族間のコミュニケーションは減少しがちです。平屋であれば全員が同じフロアで生活するため家族同士で顔を合わせやすく、コミュニケーションの機会の増加が期待できます。
1-3.安定した構造で広々とした空間を作れる
平屋は2階がなく、建物の高さや重さを抑えられるため、2階建てなどと比較すると構造が安定し、耐震性が高まる傾向にあるのが特徴です。2階建ての場合、2階部分を支える目的で多くの柱や壁が必要ですが、平屋では少ない柱や壁で住宅を支えられます。
また、2階建てより柱や壁が少なく済む平屋は、間取りの自由度が高くなるという魅力もあります。2階建てより柱や壁を減らして広々としたスペースを作り出すだけでなく、天井を高くできるため、縦方向にもスペースを生み出すことが可能です。
1-4.バリアフリーで老後も暮らしやすい
階段は家事の妨げになるだけでなく、住宅内では危険度の高い場所です。家庭内で起こる事故のうち、実に20%程度が階段などからの転落だと言われています。上階のない平屋は室内に階段がないため、幼い子どもから高齢者まで、幅広い世代が安全に過ごせます。
住宅の購入時には若かった家族も、長く住み続ける間に年齢を重ね、次第にフラットな住宅を好むこともあるでしょう。実際、2階建て以上の住宅に暮らす高齢者からは「上階が使いにくく物置になっている」という声もよく聞かれます。平屋であれば老後にリフォームや建て替えを考えなくても、長く安全に暮らすことが可能です。
2.平屋のデメリット3選
平屋には2階建てにはない魅力が多数ある一方で、予算面から建設を断念する人も多くいます。そのため、自分たちにとって平屋が本当に最善の選択肢となるのか、資金計画を踏まえて慎重に検討することが大切です。ここからは、平屋のメリットだけでなく、デメリットにも目を向けてみましょう。
2-1.土地代と建設費が高額になりやすい
建ぺい率の関係上、建物を土地いっぱいに建設することはできません。そのため、平屋で2階建てと同じ床面積を実現するには、少なくとも2倍以上の広さの土地が必要となります。土地代は住宅の購入費用の中でも高くなりやすく、購入する土地が倍になると価格が跳ねあがる恐れがあります。
また、平屋の場合は基礎や屋根も2階建ての倍は必要です。基礎部分や屋根の施工は工事単価が高くなります。平屋の場合、土地購入と基礎・屋根の工事費など、高コストな要素が2倍以上必要になるため、同じ延べ床面積の2階建てを建てるより坪単価が高くなる傾向にあります。
2-2.日当たり・通風・プライバシーの確保が難しい
平屋の住み心地は近所の住環境の影響を受けます。日本の住宅は戸建でも2階建て以上が一般的であるため、周囲の住宅が2階建て以上の場合、低い平屋には圧迫感が生じます。場合によっては、周囲の住宅に遮られて日当たりや通風が悪くなったり、すべての部屋が外から見えてプライバシーの確保が難しくなったりする可能性もあるでしょう。
日当たり・通風・プライバシー面の問題は、住宅の内部でも生じる可能性があります。平屋で部屋数が増えると、外壁に面さず日光や風が通りにくい部屋も出てきます。また、家族同士で顔を合わせやすい一方、家族間のプライバシー確保も難しくなるでしょう。
2-3.災害や防犯の面で不安を感じやすい
平屋に限らず、立地によっては水害時に床上浸水などの被害に遭う場合があります。水害が発生しても、2階建て以上であれば上階にある家具などは被害を免れる上、1階から避難して生活空間を確保することが可能です。一方、平屋建てには人や家具が水害から退避できる場所がありません。平屋を購入する場合はハザードマップなどで地域の情報を確認し、慎重に土地選びを行うのがポイントです。
また、平屋では災害時だけでなく、防犯面でもリスクが生じます。平屋は窓を含めてすべての出入り口が1階にあるため、空き巣などが外部から侵入しやすくなります。平屋に住む場合は、2階建てよりもしっかりした防犯対策が必要です。
3.平屋のデメリットを解消する方法
平屋のデメリットは、間取りなどを工夫することで一部は解消できます。平屋のデメリットを解消するには、次のような方法が考えられます。
「くの字」の間取りを採用する
建物の形を、長方形を少し曲げたような「くの字型」にし、その内側に庭を設けると、建物を利用して外から庭への視線をある程度遮断でき、プライバシーを確保しやすくなります。玄関を「くの字」の中心近くに設けると生活動線の短縮が可能です。
「コの字」の間取りを採用する
建物を「コの字」に配置して中心部に庭を設ければ、庭の3方向を建物で囲うため、プライバシーを守りやすくなり、洗濯物も周囲の視線を気にせず中庭に干せます。また、長方形の建物より外壁に面する部屋を増やすことができ、各部屋の採光・通風もよくなるでしょう。
平屋風の2階建てにする
スキップフロアを設けるなどして平屋風の2階建てにすると、平屋より小さい土地で延べ床面積を確保できます。平屋ならではの開放感を楽しみつつ、災害時などの避難所として2階を活用できます。また、2階に子ども部屋だけを配置すれば、家族間のプライバシーも確保することが可能です。
デメリットを解消して平屋を建てるのもよい方法ですが、どうしても予算が合わない場合は2階建てを検討するのも1つの方法です。2階建てには、「狭い土地でも部屋数や延べ床面積を確保しやすい」「家族間でプライバシーを保ちやすい」など、平屋とは違った魅力があります。近年の2階建ては耐震性も決して低くはなく、家族の安全を守る性能を十分に備えているため、ぜひ選択肢に入れるとよいでしょう。
まとめ
平屋は開放感のある間取りで人気の高いスタイルですが、費用がかかりがちで、水害や防犯への備えが薄くなりやすいなどのデメリットもあります。平屋のデメリットを解消する方法はありますが、すべての問題が解消されるとは限りません。予算が合わない場合は、平屋だけでなく2階建てまで選択肢を広げて検討するのがおすすめです。
グランディハウスでは、動線設計・収納設計・コミュニケーション設計・ゆとり設計を考えぬいた住宅を販売しております。平屋・2階建てを問わず、住宅の購入をご検討の際はぜひご相談ください。