新築住宅を建てるにあたって着目したい住宅性能が、気密性や断熱性です。高気密・高断熱住宅は、外気温の影響を受けず冷暖房効率も高くなることから人気があります。一方で、高気密・高断熱住宅を建てる際に事前に知っておくべきデメリットや注意点があることも事実です。
当記事では、高気密・高断熱住宅のメリット・デメリットや注意点を解説します。納得できる住宅を建てたい人や、失敗をしたくない人は、当記事を満足のいく家づくりの参考にしてください。
1.高気密・高断熱住宅とは?
高気密・高断熱住宅とは、高気密住宅と高断熱住宅の特徴をあわせ持った住宅です。具体的には、すき間が少ない作りで、熱を伝えにくい素材を使った住宅のことを指します。外気温の影響を受けにくいため、住宅内の温度が一定に保たれやすいことが特徴です。
高気密住宅と高断熱住宅には次のような特徴があります。
住宅の種類 | 特徴 |
---|---|
高気密住宅 |
|
高断熱住宅 |
|
外気温の影響を受けず住宅内の温度を一定に保つことができる高気密住宅と、高断熱住宅の特徴をあわせ持つ住宅が、高気密・高断熱住宅です。そのため、省エネ性能も期待できます。一方で、空気の出入りが減るため空気がこもりやすくなるという側面もあります。
2.高気密・高断熱住宅のメリット
高気密・高断熱住宅を建てることには、さまざまなメリットがあります。その中でも代表的なものは、次の3つです。
- 外気の影響を受けないため年中快適に過ごせる
- ヒートショックを予防できる
- 冷房・暖房の費用を節約できる
いずれも、住宅内の温度を一定に保てる、高気密・高断熱住宅ならではのメリットといえます。メリットの具体的な内容は、次のとおりです。
2-1.外気の影響を受けないため年中快適に過ごせる
高気密・高断熱住宅は、空気の流通と熱の伝わりを遮断します。そのため、住宅内の温度が外部の温度変化の影響を受けにくいことがメリットです。夏の暑さも冬の寒さも、住宅内には伝わりにくく、エアコンで快適に調整した住宅内の温度が長く安定して保たれるため、年間を通して快適です。
夏の暑さや冬の寒さが厳しくなっている昨今、夏を涼しく冬は暖かく、お家時間を快適に過ごせることは大きなメリットといえるでしょう。
2-2.ヒートショックを予防できる
ヒートショックとは、部屋によって大きな温度差があることが原因で血圧や脈拍が大きく変動することです。場合によっては、心臓発作や脳梗塞を引き起こすリスクもあります。「冬のリビングは暖かいのに浴室は寒い」という場面がヒートショックの一例です。
高気密・高断熱住宅は、外気温の影響を受けず住宅内全体の温度を一定に保つことができるため、ヒートショックの予防ができます。高齢者にも嬉しい健康住宅といえるでしょう。
2-3.冷房・暖房の費用を節約できる
冷房・暖房の費用を節約できることも、高気密・高断熱住宅のメリットです。高気密・高断熱住宅は、外気温の影響を受けず住宅内の温度を一定に保つことで、冷暖房効率を高めることができます。設定温度を強めに調節しなくても効きがよく、光熱費を抑えることが可能です。
高気密・高断熱住宅に住むだけで省エネ効果が期待でき、お財布にも、地球環境にも優しい暮らしを実現できる住まいは魅力的でしょう。
3.高気密・高断熱住宅のデメリット
高気密・高断熱住宅にはメリットもある一方で、次のようにいくつかのデメリットもあります。
- 空気がこもりやすくハウスダストの対策が必要になる
- 壁の内側・床下・天井裏で内部結露が発生するリスクがある
- 断熱材や建築資材などの導入により建設費用がかかる
デメリットは、事前に知っておくことで対策をたてることが可能なものがほとんどです。以下に具体的な内容や、考えられる対策方法の一例を説明しているため参考にしてください。
3-1.空気がこもりやすくハウスダストの対策が必要になる
高気密・高断熱住宅は、構造上、空気がこもりやすい特徴があります。すき間面積をできるだけ少なくし、屋外との空気の出入りを最小限にしているためです。高気密・高断熱住宅の室内温度は保たれますが、ハウスダストが自然に外に出ていかず健康被害のリスクが高まります。
ハウスダストの対策方法としては、設置が義務付けられている24時間換気システムを止めないことです。24時間換気システムは、窓を閉めていても住宅全体の空気を時間をかけて入れかえることができます。
3-2.壁の内側・床下・天井裏で内部結露が発生するリスクがある
高気密・高断熱住宅では、壁や床、天井の内部で結露が発生する可能性があります。内部結露は、壁などの内部にグラスウールなどの断熱材を入れる際に、すき間ができることで起こる現象です。断熱材のすき間から入り込んだ冷たい外気が、断熱材内部の温度の高い空気と触れると結露し、カビなどの原因になります。
内部結露の対策方法は、断熱材設置の施工実績がある業者に依頼することです。目視では確認しにくい断熱材のすき間をふさぐ技術と、経験のある業者が施工することで結露のリスクはかなり減らせるでしょう。
3-3.断熱材や建築資材などの導入により建設費用がかかる
高気密・高断熱住宅は、他の住宅に比べて建築費用が高くなるデメリットもあります。断熱効果の高い建築資材は材料費が高価なものが多いこと、すき間なく断熱材を入れるなど高い精度での設計・施工技術が求められることが主な原因です。
コストを安く抑えたいところですが、ランニングコストを考えると建築時の初期費用を抑えることは得策とは言えません。高気密・高断熱住宅にすると冷暖房コストが節約できることなども考えあわせることが、満足できる家づくりにつながります。
4.高気密・高断熱住宅を建てる際の注意点
高気密・高断熱住宅を建てる上で注意すべきポイントは、次の3つです。
断熱等性能等級が4以上の施工会社を選ぶ
断熱等性能等級とは、どれくらい断熱性能の高い住宅を建てられる施工会社なのかを示す基準の1つです。等級は1~4まであり、4がもっとも高い等級にあたります。さらに、より高いHEAT20という基準もあります。
断熱性のある住宅と一言でいっても、その性能はさまざまです。高い断熱性能の住宅を建てられる施工会社を選びましょう。
24時間換気システムは、空気の流れをコントロールしやすい第1種換気方式を選ぶ
24時間換気システムとは、窓を閉めていても、住宅全体の空気を時間をかけて入れかえることができる換気方法です。
第1種換気方式では、空気の入口と出口の両方にファンを付け、吸気及び排気の両方を機械を使って行います。そのため、空気の流れをコントロールしやすく換気効率がよいことが特徴です。気密性の高い住宅では、シックハウス症候群を防ぐためにも第1種換気方式を選びましょう。
寒冷地仕様と温暖地仕様の性能を理解した上で窓サッシを選ぶ
高気密・高断熱住宅では日差しの取り入れ方で体感温度が変化するため、窓選びも重要です。
寒冷地では、断熱性の高い樹脂サッシに断熱タイプの複層窓ガラスの組み合わせが適しています。一方、温暖地では樹脂複合サッシに遮熱断熱タイプの複層窓ガラスの方が快適です。住宅を建てる場所に合わせて窓の種類や大きさを選びましょう。
まとめ
高気密・高断熱住宅は、外からの空気の出入りや熱の伝わりを少なくすることで、外気温の影響を受けず温度を一定に保つことができる住宅です。そのため、冷暖房効率アップによる省エネ効果や冷暖房費節約、ヒートショック予防などのメリットがあります。
一方で、空気がこもりやすく建設コストがかさむことがデメリットです。ただし、施工や生活上の注意点をふまえれば、デメリットをなくしメリットを最大限に発揮することができます。