分譲住宅や注文住宅の購入時、「建坪」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。建坪や建築面積・延床面積など、一戸建てを購入する際にはさまざまな建築用語を把握しておくと、ハウスメーカーや工務店とスムーズに打ち合わせを行えます。
当記事では、建坪という言葉の意味とともに、よく使われるその他の建築用語に関しても詳しく解説します。言葉の意味を勘違いしていると、思い通りの家を購入できなかったり、思いがけず予算オーバーをしてしまったりする可能性があります。事前に、建築用語について学んでおきましょう。
1.建坪とは?
注文住宅や分譲住宅の広告やハウスメーカー・工務店の担当者との話し合いでは、頻繁に「建坪」という言葉が登場します。建坪とは通常、建物の建築面積を坪数換算した数字です。
ただし、建坪には建築基準法(建物を建設する際のルールを定める法律)上の明確な定義がありません。会社によっては建物1階の床面積を坪数換算した数字を「建坪」と表現することもあるため、注意しましょう。
建築面積を基準にした「建坪」と1階の床面積を基準にした「建坪」では数字が大きく異なることから、事前に確認を怠ると、理想の家を建てられません。いずれを意味しているかが不安な場合は必ず、担当者に質問しましょう。
1-1.建坪の計算方法
1坪は3.30578平方メートル程度であり、1平方メートルは0.3025坪程度です。そのため、建築面積を坪数換算した数字が「建坪」と考える場合の建坪は、以下の式で計算できます。
建坪(坪)=建築面積(平方メートル)×0.3025
たとえば、建築面積が100平方メートルの場合の坪数は「100×0.3025」で、30.25坪と計算します。建築面積が80平方メートルの場合の坪数は「80×0.3025」で、24.2坪です。
以下は、建物1階の床面積を坪数換算した数字が「建坪」と考える場合の計算方法を示します。
建坪(坪)=建物1階の床面積(平方メートル)×0.3025
たとえば、建物1階の床面積が50平方メートルの場合の建坪は「50×0.3025」で、15.125坪と計算します。建物1階の床面積合計が70平方メートルの場合の建坪は「70×0.3025」で、21.175坪です。
なお、一部の会社では「1坪を3.3平方メートル」として建坪を計算することもあります。地価の高い都心部ではわずかな数字の違いで坪単価が変化し、予算オーバーするケースもあるため、注意しましょう。
2.建坪算出に関わる建築用語
家の広さに関する住宅業界の専門用語は、建坪以外にも複数あります。以下では広さに関する用語のうち、重要度が高いものをピックアップして紹介します。家族の夢を叶えた家を作るための基礎知識として、参考にしてください。
2-1.建築面積
建築面積とは、建物の外壁、または柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積です。ただし、軒(のき)や庇(ひさし)などが外壁や柱の中心線から1メートル以上出ている場合には、その端から1メートル後退した場所をもとに水平投影面積を算出します。水平投影面積とは、建物の真上に太陽が来た時、できる影の面積のことです。
一般的な家では1階のほうが2階よりも広いため、1階の面積が「建築面積」にあたります。2階や3階のほうが1階よりも広い場合の建築面積は、もっとも広い階の面積です。
なお、建築面積は柱と屋根がある建物部分をすべて含めて算出します。たとえば、カーポート(柱と屋根のみを付けた簡易的な駐車場)がある家ではその範囲も、建築面積に含めるルールです。
2-2.延べ床面積
延べ床面積(延べ面積)とは、建物の外壁や柱の中心線で囲まれた各階の床面積の合計です。2階建ての家の場合は1階と2階の床面積を足したものが延べ床面積にあたります。
延べ床面積は主に、容積率を計算する際に使用する数字です。容積率を計算する際の延べ床面積は一定の条件を満たす場合、以下の部分を除外し、算出できます。
- 吹き抜け空間
- ベランダ、バルコニー
- ロフト
- 出窓
- 外部廊下、階段
上記をうまく取り入れれば延べ床面積を増やせない場合も居住空間を広げて、広々とした住まいを設計できます。ただし、延べ床面積から除外される部分を増やしすぎると費用がかさむケースもあるため、注意しましょう。
2-3.坪単価
坪単価とは1坪あたりの建築費の目安を把握するために活用される数字で、以下の式で計算できます。
坪単価(円)=本体価格(円)÷坪換算の延べ床面積(坪)
ただし、坪単価にも建築基準法上の明確な定義がありません。会社によっては上記とは異なる計算方法で、坪単価を算出することもあります。また、本体価格に含む費用項目も、会社ごとにさまざまです。そのため、坪単価のみを判断基準として、複数社のコストパフォーマンスを比較することは避けましょう。
2-4.建蔽率
建蔽率(けんぺい率)とは、敷地面積に対する建築面積の比率です。建蔽率は、以下の式で計算できます。
建蔽率(%)=建築面積(平方メートル)÷敷地面積(平方メートル)×100
建蔽率の上限は用途地域(計画的な街づくりを実現する目的で、自治体が決定する地域区分)によって異なることから、敷地面積が同じでも、建てられる家の広さが変化します。
たとえば敷地面積100平方メートル・建蔽率上限が80%のエリアの土地には、建築面積80平方メートルの家を建てることが可能です。同じ敷地面積で建蔽率の上限が60%の土地では、建築面積60平方メートルの家までしか建てられません。
2-5.容積率
容積率とは建蔽率とともに表記されることが多い、敷地面積に対する延べ床面積の比率です。容積率は、以下の式で計算できます。
容積率(%)=建築面積(平方メートル)÷延べ床面積(平方メートル)×100
容積率の上限は、用途地域や敷地の前にある道路の幅によって決まります。建蔽率や容積率の上限を超える設計の家は「違法建築」にあたり、住宅ローンを利用できない可能性があるため、注意しましょう。
3.建坪に含まれるものと含まれないものは?
建坪を計算する際に使用する「建築面積」は、広さの算出に含むものと含まないものを区別して求めることが必要です。以下では建坪を計算する際に注意を要する、建築面積に含むもの・含まないものの具体例を紹介します。
3-1.建坪に含むもの
建築基準法における「建物」とは、土地に定着していて、屋根と柱や外壁があるものです。吹き抜け空間にも屋根や外壁はあるため、建築面積に含めます。
屋根付きの中庭部分も同様の理由から、建築面積の一部です。中庭に屋根がなく、外部と接する形状に設計した場合には「建物」の条件を満たさないため、建築面積に含まれません。
3-2.建坪に含まれないもの
建築基準法第二条において建物から突き出した部分がある場合の建築面積は、下記の通りの場所を基準線と考えるように指定します。
軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離1メートル後退した線
上記に従うと突き出した部分が1メートルを超える場合には端から1メートル後退した場所を、建築面積を算出する際の基準線と考えます。突き出した部分が1メートル以下の場合は、建築面積に含みません。
出窓は以下の条件を満たす場合のみ、建築面積の算出から外せます。
- 出窓の下部にある床面からの高さが30センチメートル以上
- 出窓の周囲の外壁から突き出した部分が50センチメートル未満
- 窓の面積が1/2以上
ただし、上記を満たしていても以下にあてはまる出窓は、建築面積に含まれます。
- 出窓の天井が室内の天井よりも高い
- 出窓の下部に収納がある
- 屋根と出窓の天井が一体化している
出窓の場合は「建築面積に含まれるか」を判断するための基準が細かく、法律に沿った設計になっているかを素人判断することは危険です。実際に家づくりを進める際には住宅設計のプロに相談し、法律に沿った設計を採用しましょう。
まとめ
建坪とは、一般的には建物の建築面積を「坪」の単位で表したもので、広さの目安や坪単価を算出する際に使用されます。ただし、坪と平方メートルの換算時の小数点の扱いが会社ごとに異なっていたり、建築面積ではなく1階の延床面積で建坪を計算する場合もあったりなど、建坪の計算方法は工務店により異なります。
建坪の違いにより、予算感やイメージしている広さなどが変わる可能性もあります。家を購入する際は建築用語について理解した上で、どのような算出方法で建坪を計算しているか、工務店に確認することが大切です。